孤高の猛禽「イヌワシ」の事。

 今年は伊吹山ドライブウェイ開通の春先から夏場に掛けてはイヌワシ撮りの遠征は控えようと思い、未だに遠征には出掛けていない。そして今年は昨年に続き繁殖に成功し幼鳥も誕生し育っている。幼鳥が親と飛び回れ気温も落ち着いた頃にでも行ってみよう。それまで幼鳥が無事に育つことを願っている。

 

撮影機材 カメラ:ソニーα1

     レンズ:ソニーFE600mm F4 GM+1.4テレコン

     三脚 :撮影当時ジッツォ5542LS / 現ザハトラーflowtech75

     雲台 :撮影当時ザハトラーFSB8 / 現ザハトラーaktiv8

                  照準器:撮影当時オリンパスEE1 / 現SONIDORI

 

 孤高の猛禽、イヌワシそしてクマタカ・・・イイですね~あの鋭き眼光。他にもオオタカハヤブサなど様々な猛禽類がいるが、それぞれに魅力を感じる。やっぱり猛禽類はイイ!!! 

 イヌワシ成鳥・・・伊吹山昨年撮り

 

 改めてだがイヌワシ(狗鷲・犬鷲)とは・・・北半球の山岳地帯や開けた草原地帯に生息する大型の猛禽で食物連鎖の頂点に君臨する。日本では北海道から九州の山岳地帯に生息しているが、その個体数は極めて少なく危機的状況にある。全国に500羽いるかいないか程の個体数と聞く。

 イヌワシは平均60キロ圏内と言う広範囲をテリトリーとし、野ウサギやテンをはじめとした小動物や蛇やヤマドリ、鹿の幼獣までも狩り捕食している。時には鹿の成獣にまで爪を立てる事もある。それはそうだろう、モンゴルでは鷹匠イヌワシを使いオオカミを狩っているのだから・・・。

 

 目線下を飛翔するイヌワシ・・・昨年撮り

 

 昔の天狗伝説の天狗様、天狗の神隠しなどはこのイヌワシではないかと自分は思っている。長閑な山村、乳飲み子を籠に入れ傍らに置き農作業。さて帰ろうと籠の中の子に目をやるといない。小さな子供が忽然と消える・・・イヌワシならいとも簡単にさらって行くだろう。

 確か記憶では明治28年か29年に、広島県三次郡(現三次市)の村で小児が大きな鷲に掴まれ山に連れ去られ行方不明になった事件があった。これは当時の読売新聞の朝刊に記事として載っており、事実としてあった事件だ。そしてこれとは別だがイヌワシの営巣している巣の中に人骨があった例も記録にあると何かで読んだ記憶もある。

 

 伊吹山で小鹿を掴み飛翔するイヌワシ・・・昨年撮り

 このように小鹿でさえ羽ばたく事無く掴み飛翔してしまう足指の握力は百数十キロあると言われる。その力と飛翔能力には驚かされる・・・。

 

 天狗の鼻はイヌワシの大きな嘴、そして大きな団扇はイヌワシの大きな翼。音もなく大きな獲物を掴み去るのは、イヌワシにとっては容易い事と想像できる。深山幽谷に棲む天狗様・・・それはイヌワシだと思えてならないのだ。だから「狗」と言った漢字を当てているのだろう。その他にも所説ある。幼鳥の鳴き声が犬の様に聞こえるから「犬」を当てる読み方もある。そしてクマタカなどのタカの羽根は弓矢の矢に使われるが、イヌワシのそれは矢羽根に用いるタカの羽根よりも劣るので(古くは昔から劣る事をイヌとも言っていた。)、鷹の羽根よりも劣るのでイヌ(劣る)ワシと言われたとも言われている。

 昨年撮りのイヌワシの幼鳥・・・今年も楽しみだ。繁殖した年にはこの幼鳥目当ての遠征となる。

 

 何れにしても絶滅危惧種イヌワシは貴重であり、日本から消え去る事は避けなければならない。ダムやトンネルの建設に伴い環境に影響を及ぼしたり、林業の衰退により野放しにされた山林により、イヌワシが獲物を狩る事が困難な環境を作ってしまっているのも事実。こうした環境を何とかしない限り、イヌワシの個体数は更に減少の道を辿ってしまうだろう。クマタカやその他の猛禽類を見ても、餌が豊富に獲れる環境下にある野鳥の繁殖率は高いと聞く。何年間に1度の繁殖よりも毎年の繁殖の方が、個体数も増え絶滅は回避されるに決まっている。イヌワシの未来は、そうした環境を守り保つ事に尽きるのは確かだ。赤谷の森のイヌワシプロジェクトでは、山林の伐採により開けた土地を作ったことにより、そこでイヌワシが狩りを行うようになり、結果それが繁殖に繋がっている。自然を破壊する一端を担って来た人間には、そのツケがボチボチ回って来ているようにも感じる。動物達が棲み辛くなると言う事は、人間も同時に何らかのツケを払う事にもなるのだと思う。そうならない為に人間には自然を守る義務があるのだ。あぁ~、何だか真面目に難しい話をしたら頭が痛くなってきた(笑)。これも勉強嫌いだった幼少の頃のツケが回って来たのだろう(大笑)・・・と言ったところで本日はこれまで。

 

                 祖新 六四

                 (そにぃ むつし)